東京外国語大学言語モジュール

ベトナム語とは

■ ベトナム語の文字
 インド文化圏にあるタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーはそれぞれインド系の固有の文字を持っていますが、ベトナムだけはアルファベットを使っています。
ベトナムには固有の文字がなく、表記は古くから漢字・漢文が使われてきました。ただし、発音はベトナム語読みでした。それが漢越語と言われているものです。
■ 字喃(チューノム)
 15世紀頃からチューノム( chữ nôm )という独特の文字が考案されましたが、多くは漢字に基づいて作られた、ベトナム語固有の語を表記するための変形文字です。このチューノムは漢字の知識が必要で、多くは画数が多くて難解であったこと、その他諸々の理由のために国字になるまでには至りませんでした。
■ アルファベット表記の導入
 現在の文字はチュー・クオックグー( chữ quốc ngữ )というアルファベットです。この文字は中世にヨーロッパから来た宣教師たちによって作られたものです。チュー( chữ )は「文字」、クオックグー(quốc ngữ)は「国語」という漢字が当てはまりますが、その意味はベトナム語を表記するためのアルファベットということです。
■ 漢語の影響
 ベトナムは地理的、歴史的に中国の影響を強く受けています。
 ラオス、カンボジアとの国境沿いに、アンナン山脈が南北に走っています。その西側の東南アジア(大陸部の)諸国は、インド文化圏に属しています。東側のベトナムだけが漢字文化圏に属しています。
 そのためにベトナム語には中国語からの借用語である語(漢越語と言う)が非常に多くあります。また両言語は言語的にも似ているところがたくさんあります。たとえば、共に声調言語であること、孤立語で語形変化がないこと、さらに文の基本的語順が同じであることなどです。
■ オーストロアジア語族
 オーストロアジア語族の中には、もうひとつモン・クメールグループがあります。ですから、ベトナム語はクメール語(カンボジア語)と近い関係を持っていると見られているわけです。