東京外国語大学言語モジュール

直説法(完了)過去(完全過去)

   (完了)過去は「発話時点より前に起きた事象を,現在に視点を置いて,完了したものとして示す」時制で,日本語の「~した,してしまった」にあたります.事象が完了していることが表現の中心になることもあり,対象となる過去の事象が直前の場合もあります.(「(ちょうど)~したところだ」)
Alfred Hitchcock nasceu em 1899, numa família da pequena burguesia londrina.
(アルフレッド・ヒッチコックは1899年ロンドンの小ブルジョアの家庭に生まれた)
Também o número de instalações sanitárias duplicou.
(衛生関係の施設の数も倍になった)
Ainda em criança, emprestou a sua voz a séries de desenhos animados.
(彼はまだ子供の頃に漫画番組に声優として出演した)
Mas a notícia apanhou quase de surpresa as autoridades portuguesas.
(しかし,その知らせはポルトガル当局筋にとってはほとんど驚きであった)
Um dia, acidentalmente, na rua, voltei a encontrar o Álvaro.
(ある日,たまたま,私は道でアルバロに再び出会った)
Só no início do século XIV começaram a aparecer essas narrações.
(14世紀初頭になってはじめてこのような語りが現れ始めた)
   歴史書などでは,過去形の代わりに現在形が用いられることもあります.歴史的現在と呼ばれるものです.
A descolonização de Moçambique domina a agenda política do Verão de 1974.
(モザンビークの脱植民地化は1974年夏の政治日程の中心だった)
   これに対して,ポルトガル語では半過去や不完全過去などと呼ばれる形があります.こちらの形は,「過去のある事象を展開中の一局面でとらえて表現する」もので,いわば過去に移行した現在時制です.過去の時点に視点が置かれ,出来事の過程そのものが表現の中心になるので,過去において継続していた事柄(「~していた」)や繰り返し起った出来事,習慣(「~したものだった」)などを表します.
Os alunos estavam sentados.
(その生徒たちは座っていた)
No 25 de Abril, Samora tinha 15 anos.
(4月25日革命の時,サモラは15歳であった)
Pensava em não ir à tropa, e não fui.
(私は軍隊に行かないつもりだったし,実際に行かなかった)
Cada uma das caixas continha 500 maços de tabaco da marca americana "Winston".
(一つ一つの箱にはアメリカタバコの“ウィンストン”が500パッケージ入っていた)
O periquito dormitava no poleiro.
(インコは止まり木の上で居眠りをしていた)
   過去形と半過去形を対照的に用い,効果的に表現することが出来ます.
Estávamos num café e pedi segunda bica.
(私たちはあるカフェーにいて,私は2杯目のビーカを注文した)
De noite, a temperatura subiu e, pela manhã, Márcia já estava no hospital.
(夜に熱が上がり,朝方にはマルシアはもう入院していた)
Quando eu cheguei à estação ao meio-dia, ele já esperava por mim em frente da estátua.
(私が正午に駅についたとき,彼はすでに彫像の前で待っていました)
Desde que o meu pai morreu eu pensava em lhe escrever, mas eu era pequena e sempre me faltou coragem.
(私の父が死んで以来あなたに手紙を書こうと思っていました.でも,私は小さかったし,どうしても勇気が出ませんでした.)
Meu avô morreu quando eu tinha onze anos.
(私の祖父は,私が11歳の時に死にました)
Uns dias depois eu achei que ele estava me seguindo na rua.
(数日後,彼が通りで私の後をつけているのを発見しました)
   ある過去の事実を表現するのに,過去を用いるか,半過去を用いるかは話し手による視点の選択と関係しています.そのため,いずれの形も文法的に可能な場合もありますが,前後の文脈などから視点が制限され,いずれかしか使えないという場合も生じます.この2つの時制の区別はポルトガル語では基本的なので,使い分けに注意する必要があります.ポルトガル語では過去に関して,他のロマンス語におけるような複合過去の発達は見られません.