主語を言わなくてもかまわない、というのは、日本語で考えれば当たり前のことですが、外国語の作文をするのに、主語を言わないと完全な文のような気がしないと思われる方もいるので、説明しておきます。
1.食う+バナナ=バナナを食う。
この文では、うさぎが食うということが、話し手にも聞き手にもわかっているので、わざわざ言っていません。
(1)ស៊ីចេក។
(食う+バナナ=バナナを食う。)
[シー・チェーク siː ceːk]
2.うさぎ+だます=うさぎがだます。
この文では、誰をだますのかわかっているので、わざわざ言っていません。
(2)ទន្សាយបោក។
(うさぎ+だます=うさぎがだます。)
[トンサーイ・バオク tʷɔ̀nsaːi baok ]
3.おばあさん+ののしる=おばあさんがののしる。
この文では、誰をののしるのかわかっているので、わざわざ言っていません。
(3)យាយជេរ។
(おばあさん+ののしる=おばあさんがののしる。)
[ジアイ・チェー yiˑəi cèː]
この「わかっていることは言わない」、逆にいうと、「わざわざ言うときにはそれなりの意味がある」という原則は、日本語で慣れ親しんでいるのと同じように応用していただければ、まず問題ありません。
教室で先生に指名されたときに、「わかりません」というのと「私はわかりません」というのは何かが違いますし、「お元気ですか」と聞かれて、「元気です」というのと、「私は元気です」というのも何かが違うはずです。