東京外国語大学言語モジュール

現在を指示する

たとえば日本語で,「書く」には特に文法的なマークがない「無標」であるのに対して,「書こう」「書いた」はいわゆる「助動詞」が付加された「有標」の形です。
ことばに文法形式として対立がある場合,現在形と非現在形,肯定形と否定形,直説法と非直説法の対立があれば,前者が無標で,後者が有標形式であるのが普遍的であると考えられます。つまり,ことばは現実について,心理的な脚色なしに肯定形で述べるのに便利にできているのです。否定形が無標で,肯定する場合にわざわざ何かでマークするような言語は,たぶん存在しないでしょう。