東京外国語大学言語モジュール

「文法」の定義

一般に,複数の単語を組み合わせるのに必要な規則の集合は「統語論」(構文論)と呼ばれ,これが狭い意味での文法にあたります。一方,単語の組み立てについての規則の集合は「形態論」と呼ばれます。広い意味での「文法」は,統語論と形態論とを含むものです。意味を担う最小の言語形式を「形態素」と呼ぶと,統語論は単語に相当する形態素の組み立てについての規則であり,形態論は単語より小さな,単語の部品となる「語基」や「接辞」といった形態素の組み立て(派生)についての規則と,形態素の組み合わせによる複合語形成の規則とからなります。
統語論と形態論の文法に占める割合は言語によって(言語の語構成法の複雑さによって)異なります。たとえば英語の文法は統語論が中心ですが,ラテン語やサンスクリット語の文法では形態論が大きな部分を占めています。 「多総合語」といって,エスキモー語のように,主要語にさまざまな文法接辞をつなげることで,大きな「語」を組み立てる言語もあります。
形態論と統語論の区別については,以下を参照してください。
ブルームフィールド『言語』:第12章「統語論」[三宅鴻・日野資純訳] 1962年,大修館書店。