東京外国語大学言語モジュール

「文」とその構成単位

言語学の術語では,意味を持つ最小の言語形式を「形態素」と定義しています。「最小」とは,それ以上分解すると意味を持たなくなるという意味です。人間言語の特徴として,その「二重分節性」が挙げられます。文を分解すると,意味を持つ最小の単位である形態素が抽出できます。これを,言語の「第一次分節」と呼びます。さらに形態素を分解すると,意味を持たない音(オン)が抽出できます。これを言語の「第二次分節」と呼びます。有限少数の音の単位(音素)を組み合わせて,無限ともいえる数の形態素を作り出すことが,人間の言語の重要な特徴です。
言語の二重分節性については,以下を参照してください。
アンドレ・マルティネ『一般言語学要理』:第1章「言語学,言語活動および言語」[三宅徳嘉訳]1972年,岩波書店。
「言語形式」とは,ある言語で許される音の組み合わせのうち,意味を持つものを指します。たとえば,「ロフ」は,日本語で許される音の組み合わせで,現代の日本人は自然に発音できるので,日本語として許容可能な「音声形式」ですが,意味を持たないので,言語形式とは呼べません。将来,この形式になんらかの意味が社会的に共有されれば「言語形式」として認められるという,潜在的可能性を持っています。
なお,このような「音声形式」,「言語形式」といった用語の定義については,以下を参照してください。
ブルームフィールド『言語』:第8章「音声的構造」および第9章「意味」,[三宅鴻・日野資純訳] 1962年,大修館書店。
服部四郎「具体的言語単位と抽象的言語単位」,『言語学の方法』所収,1960年,岩波書店。