東京外国語大学言語モジュール

伝聞・推量と間接表現

「彼が犯人ではないかと思う」,「彼が犯人であることを疑う」などと言う場合,「彼が犯人である」ことが事実であるかどうかは,話し手も知らないわけです。「世界が平和であるようにと望んでいる」という文では,話し手は世界が必ずしも平和でないことを知っているでしょう。
このように,「~と思う,言う,考える,疑う,望む」などを「主文」とする文で,主文の判断の対象である出来事(「~」という引用部分に入る「補文」)が,現実のことか,現実と異なるかが問題にならない場合,補文の中の述語動詞に,現実であることを表す直説法とは異なる文法形式を与えるような言語があります。このような体系的な文法形式を持っている場合,これを「接続法」と呼びます。
関連する表現として,誰かの言ったことを伝聞として引用するときに,直接に内容を引用する直接話法とは異なった,間接話法に関する規則を用いる言語もあります。