東京外国語大学言語モジュール

Step3 : 015: ドイツ語の文を作る手順

 このように,日本語の文から出発すると,簡単に正しい語順のドイツ語文が作れるのですが,いくつか補足説明が必要です。
 まず,ステップ5で見たように,文頭には主語以外の色々な文成分をかなり自由に置くことができますが,定動詞の後ろでは主語の人称代名詞をなるべく前に置かなければなりません。
(1)
今日 彼は その女子学生に メールを 送るの?
 
×
Schickt heute er der Studentin eine Mail?
 
Schickt er heute der Studentin eine Mail?
(2)
そこで あなたは 何を するのですか?
 
×
Was machen dort Sie?
 
Was machen Sie dort?
 もう一つは否定を表す nicht の位置です。nicht の位置については日本語の文から出発してもうまく行きません。例文 (3) と (4) を比べてみましょう。
(3)
Er kommt heute nicht. 彼は今日来ない。(別の日については何も言っていない)
 
← er  heute  nicht  kommt
(4)
Er kommt nicht heute. 彼は今日は来ない(が,別の日に来る)。
 
← er nicht heute kommt
 (3) は 「彼は今日来ない」 と言うだけで,別の日に来るかどうかについては何も言っていません。一方 (4) は 「彼は今日は来ない」 と言うだけでなく,「別の日には来る」 という含みがあります。つまり 「今日」 を否定しているのです。(4) で nicht が heute (今日) の直前に置かれていますが,このように nicht は否定の対象の直前に置くというのが原則です。(3) は nicht が文末に置かれていますが,上で説明したドイツ語文を作る手順を逆戻りして,動詞を最後に置いた段階で考えると 「er - heute - nicht - kommt」 となり,nicht は kommt (来る) を否定しているということが見て取れます。まとめると,否定を表す nicht は,定動詞を最後に置いた段階で否定の焦点の直前に置くということになります。