東京外国語大学言語モジュール

003: 動詞の現在人称変化 (3)

 単数の「彼女は」も複数の「彼ら/彼女たち」も sie ですが,動詞の語尾が単数なら -t,複数なら -en というように異なるので区別がつきます。複数の sie と2人称敬称の Sie は,動詞の語尾も一緒です。そもそも,2人称敬称の Sie は3人称複数の形を転用したものなのです。したがって音では区別できませんが,状況や前後関係から「彼ら/彼女たち」なのか「あなた/あなたたち」なのかはわかります。なお,敬称の Sie とは異なり,3人称単数の sie も3人称複数の sie も文頭以外では s を小文字書きします。
 なお,中性の es が常に事物を表すとはかぎりません。ステップ10で勉強しますが,ドイツ語の名詞には男性名詞中性名詞女性名詞の区別があります。たとえば Kind (子供) は中性名詞なので,「その子供」を代名詞で受ける場合は,実際に「その子供」が男の子か女の子かに拘らず中性の人称代名詞 es で受けます。一方,たとえば Tisch (テーブル) は男性名詞,Uhr (時計) は女性名詞なので,前後関係によっては er や sie が「それ」となる場合もあります。
reden (語る) やarbeiten (働く) のように,語幹が -d や -t などで終わる動詞は,語尾 -t の前に e を入れます。
これは,同じ子音や似ている子音の重複をさけて発音しやすく,また聞き取りやすくするためです。
arbeiten (働く) ⇒ er arbeitet (彼は働く),sie arbeitet (彼女は働く)
reden (語る) ⇒ er redet (彼は語る),sie redet (彼女は語る)