継続・反復アスペクト
モンゴル語には、動作や状態の継続または反復を表す継続・反復アスペクトの形式があります。
継続・反復アスペクトは、次のような複合的形式によって表されます。
【語幹-даг】 бай-
【語幹-аад】 бай-
【語幹-саар】 бай-
形式の前半部分は形動詞形語尾 -даг ・副動詞形語尾 -аад ・副動詞形語尾 -саар ですから、発音と正書法上の注意はそれぞれの項を参照してください。
3つの形式は次のように使い分けられます。 いずれも、進行・継続アスペクトとの違いに注意してください。
アスペクト形式 -даг бай- をとった動詞は、別の語尾で表される過去・未来の各時点において、、「(いつも・ふだん)~する…」というテンスを超越した恒常的・習慣的な時間的意味が実現していることを表します。
Зоддог байсан. 「殴る」という動作が恒常的・習慣的に行なわれていた
Тусалдаг байв. 「助ける」という動作が恒常的・習慣的に行なわれていた
Байдаг байлаа. 「いる」という状態が恒常的・習慣的にあった
ただし、テンスが現在の場合は、すでに学習した形動詞形 -даг の終止形用法がありますので、そちらを使います。
Зоддог. 「殴る」という動作が恒常的・習慣的に行なわれている
Зоддог байдаг. (×)
また、テンスを表す語尾が終止形 -жээ をとった場合、「~するべきだった」・「~すればよかった」という話し手の後悔の気持ちを表す特殊な意味になりますので注意が必要です。
Тэр номыг авдаг байжээ. その本を買うべきでした。(『いつも買っていた』ではない)
一方、アスペクト形式 -аад бай- 及び -саар бай- をとった動詞は、別の語尾で表される過去・未来の各時点において、語幹の表す動作や状態が継続または反復している(いた)ことを表します。継続を表すか反復を表すかは、動詞の語彙的な意味や文脈から決まります。
Өвдөөд байна. 「痛む」という状態が継続している
Уншаад байсан. 「読む」という動作を継続していた/反復していた
Унтсаар байна. 「寝る」という動作を継続している
Байсаар байна. 「ある」という状態が継続している
反復を表す場合は、反復される個々の動作ごとに実際の動作主が違う場合もあります。
Манайд хөдөөнөөс хүмүүс ирээд байна. うちにはいなかから人が来つづけています。(実際の動作主はすべて別々でも可)
Манайд хөдөөнөөс хүмүүс ирсээр байна. 同
-саар бай- の補助動詞の前に助詞 л が挿入されると、「まだ/ずっと(~しつづけている)」というやや主観的なニュアンスが加わります。
Гадаа бороо орсоор л байна. 外では雨が(まだ/ずっと)降りつづけています。
その他の形式
アスペクト形式 -саар бай- の変種として、補助動詞を ир- に変えた形があります。このとき、テンスを表す部分は過去形になります。
【語幹-саар】 ир-過去形
この形式は、過去のある時点まで語幹の表す動作や状態が継続してきたことを表します。
Манайх өнгөрсөн жил хүртэл хөдөө амьдарсаар ирсэн. 我が家は去年までいなかで生活しつづけてきました。
重文による関連表現
直接的なアスペクトの形式ではありませんが、次のような場合にアスペクト的意味(アスペクチュアリティ)を帯びる場合があります。
以前のステップで学習した副動詞形による並列節の述語を繰り返すと、その動作が長い時間続いたことや反復して行なわれたことを表します。
Цас орж орж дөнгөж сая зогслоо. 雪は降り続けてつい先ほどやみました。
Мөгий над руу харан харан уйллаа. ムギーは私のほうを何度も見て泣きました。
語尾 -аад の場合、並列節の内容による結果に対して不満に感じるニュアンスがあり、主節の述語は多くの場合否定文となります。
Ганбат дүүгээ эрээд эрээд олсонгүй. ガンバトは妹を探し続けて(結局)見つかりませんでした。
Би энэ номыг уншаад уншаад ерөөсөө ойлгохгүй. 私はこの本を繰り返し読んでも全然わかりません。