東京外国語大学言語モジュール

主格の用法

1. 動詞のない文の主語・述語
 「AはBだ」の文型では主語・述語ともに主格となります。
الرقم خطأ.‏
(その番号は間違いですよ。)
[ar-raqm(-u) xaTaʔ(-un)]
(会話モジュール5「謝る」)
 
主語 raqm 「番号」には定の主格語尾 -u,述語 xaTaʔ 「間違い」には不定の主格語尾 -un がついています。ただし,現代標準アラビア語を会話として用いる場合は発音されません。
 
 「AはBがCだ」の文型の主題・主語・述語も全て主格になります。
هذا الحذاء تصميمُه ممتاز.‏
(この靴はデザインが素晴らしいですね。)
[haaða l-ħiðaaʔ(-u) taSmiim-u-hu mumtaaz(-un)]
主題 ħiðaaʔ 「靴」に定の主格語尾 -u,主語 taSmiim 「デザイン」に定の主格語尾 -u,述語 mumtaaz 「素晴らしい」に不定の主格語尾 -un がついています。taSmiim-u の -u には接尾代名詞 -hu が後続しているため発音されます。
 
2. 動作主
 動詞の主語である動作主となる名詞が明示される場合,主格をとります。
متى ستبدأ الدورة القادمة؟
(次のコースはいつから始まりますか。)
[mataa sa-tabdaʔ-u d-dawra(t-u) l-qaadima(t-u)]
【語句】 badaʔ-a (ya-bdaʔ) 「始まる」  dawra 「コース」
(会話モジュール12「時間についてたずねる」)
 
動作主である女性名詞 dawra 「コース」とそれを修飾する形容詞 qaadima 「来たる」に定の主格語尾 -u がついて ad-dawra(t-u) l-qaadima(t-u)  となっていますが,女性語尾-a 以外は会話では発音されません。
 
3. <yaa+名詞-u>
 人に呼びかけるときに使う yaa の後の名詞は主格語尾 -u をとります。
مرحباً، يا سيّد تاكيشي.‏
(こんにちは,タケシさん。)
[marħab-an yaa sayyid(-u) takiʃi]
(会話モジュール40「人を紹介する」)
 
会話では発音されませんが,yaa の後の名詞 sayyid 「Mr.」の格語尾は主格の -u になります。
شكراً جزيلاً، يا دكتورة.‏
((女性に)ありがとうございます,先生。)
[ʃukr-an jaziil-an yaa duktuura(t-u)]
【語句】 duktuur 「博士,ドクター(医師や大学教員を呼ぶときに使う)」
(会話モジュール31「しなければならない」)