東京外国語大学言語モジュール

　ベトナム語には活用がありません。特にヨーロッパの言語に見られるように、主語の人称や数・時制によって形が変わることが全くありません。辞書に載っているそのままの形の単語を、規則に従って並べるだけで文章が出来上がります。

　また、動詞・名詞・形容詞といった品詞の区別が明確でなく、複数の品詞で使うことのできる単語が多く存在します。たとえば "quyết định（決定）" という言葉がありますが、これは単語自体の形をまったく変えずに、「決定する」という動詞としても、「決定的な」という形容詞としても、「決定」という名詞としても使うことができます。また、名詞でありながら形容詞的な役割をするものもあります。

　動詞を使った文章を作る時、ベトナム語では [主語] ＋ [動詞] ＋ [目的語] の順に単語が並びます。つまり、英語とほぼ同じ形になります。

　否定文を作るには、動詞の前に "không" を挿入します。

　"không" は否定の助動詞なのですが、ベトナム語には否定の助動詞がもうひとつあります。"chưa" というのがそれですが、この単語には「まだ～していない」という未然の意味が含まれています。"không" はそのような意味を含みません。たとえば、「彼に会う」という文章で見ると、この二つの間にはこのような差が出ます。

 

	肯定形	：	Tôi gặp anh ấy.	（私は彼に会う）
			↓
	"không" を使った場合	：	Tôi không gặp anh ấy.	（私は彼に会いません）
	"chưa" を使った場合	：	Tôi chưa gặp anh ấy.	（私はまだ彼とは会っていません）

 

　"không" を使った場合、このように拒絶のニュアンスが出てしまうことがあります。否定形を作るときは「しない」のか「まだしない」のかを考えて、両者をうまく使い分ける必要があります。

　疑問文を作るには、動詞句を "có" と "không" で挟みます。形容詞文と同様、"có" は省略される場合もあります。

　動詞分では、「はい」は "có" を使い、「いいえ」は "Không" を使います。

　すでに見てきたように、ベトナム語では、Là 文・動詞文・形容詞文それぞれで「はい」に当たる言葉が違いますので、それぞれの単元に飛んで確認してください。「いいえ」は "không" で共通です。

　上の例では、疑問文を作るときに "không" を使いました。否定形で "chưa" という形もあったのと同じように、疑問形でもこの "không" を "chưa" に置き換えた疑問文を作ることができます。やはり "có" は省略される場合があります。

　上に挙げたのはあくまでもひとつのパターンですので、実際にはこれ以外にも多様な言い方があります。口語表現になるほど主語や "có" が省略されたりします。

　また、疑問形を "có ＋ [動詞] ＋ không?" の代わりに文末詞で代用することも実際の会話ではよく見られますので、文末詞の項目（→ [043 文末詞] ）も参照してください。