東京外国語大学言語モジュール

Step5 : こわい・悲しい・うれしい、など

これだけは覚えよう
1 感情を表わす形容詞には次のようなものがあります。
 イ形容詞:こわい、恐ろしい、悲しい、うれしい、つらい、苦しい、楽しい
 ナ形容詞:いやだ、心配だ
2 感情を表わす形容詞は、感情を抱く対象を「Nが」で表わします。「悲しい、うれしい、つらい」についてはやや個人差があり、対象を取らないと考えることもありますが、基本的に対象を「Nが」で表わせます。
(4)わたしはつらいです。
(5)わたしは仕事がつらいです。
3 感情を抱く人物は話し手(疑問文の場合は聞き手)で、「Nは」で表わされますが、省略されることもあります。第三者が主語になることはありません。
(6)あなたは地震がこわいですか。
(7)K先生がこわいです。
(1)’×田中くんは犬がこわいです。
4 第三者が感情形容詞の主語になることができるのは次の場合です。
① 伝聞や様態の表現の場合
(8)田中くんは犬がこわいそうです。
(9)田中くんは犬がこわいらしいです。
② 小説の地の文の場合
(10)田中くんは犬がこわかった。
¶これらの性質は願望を表わす「ほしいです」、「~たいです」と共通した性質です。
5 感情形容詞の辞書形から「い」をとって「がる」をつけた「こわがる、悲しがる、うれしがる」などの動詞を用いることで第三者の感情を表わすことができます。
(11)田中くんはいつも犬をこわがります。
¶これらの動詞には、「このようなものをこわいと思うとはおくびょうだ」などの批判的な意味が加わるので注意が必要です。また、これらの動詞は感情を抱く対象として「Nを」を取り、現在の状態については「Vています」の形(→「Vています(状態)」)を使います。
(12)田中くんは犬をこわがっています。
6 感情を抱く人物も感情を抱く対象も省略して、感情形容詞を単独で用いることもあります。
(13)うれしい。
7 感情を表わす形容詞と同様、対象を「Nが」で表わす形容詞に、温度・痛覚を表わす形容詞があります。これらは、知覚をもたらす対象としてのものを「Nが」に取ることができます。その他、温度や痛みを感じている体の場所を「Nが」に取ることもできます。
 例:お湯が熱い。
     手が冷たい。
     歯が痛い。