東京外国語大学言語モジュール

Step5 : 終助詞

これだけは覚えよう
終助詞は、主に文末に現れ、話し手から聞き手への伝達に伴う態度を表わします。
主なものに、次のようなものがあります。助詞ごとに用法を説明します。
Ⅰ 「か」
これだけは覚えよう
1 疑問文を作ります。
(1)あしたは日曜日ですか。
¶なお、疑問文の形でさまざまな意味を表わす文があります。くわしくは「Vてくださいませんか」、「Vてもいいです」、「Nでもいいです/Nではだめです」、「Vませんか」 を見てください。
2 「基本形+か」で自分の決心を自分に言い聞かせるときに使うことがあります。
(7)さあ、起きるか。
3 出会ったり、新たに知ったことがらを、おどろきとともに受け止める、という意味を表わすこともあります。
(8)もう12時か。
(9)あなたも二十歳になりましたか。
余裕があれば
4 ナ形容詞・名詞が述語になる場合(=「です」を伴う場合)の普通形(ナ形容詞→「形容詞の普通形」、名詞が述語に…→「名詞述語の普通形」)に「か」がつくときは、「だ」を除いて「か」をつけます。 
  (丁寧形では、必ず「です」の次に「か」がつきます。)
(10)だいじょうぶか。
(11)本か。
ただし、この形は普通体 (→「普通体」) でも特別な場合にしか使いません。くわしくはこの次の「疑問文の作り方」を見てください。
疑問文の作り方
1 丁寧体の疑問文を作る場合、「はい・いいえ」で答えさせる疑問文で、しかもイ形容詞・ナ形容詞・名詞が述語になる場合(=「です」を伴う場合)は必ず「か」を用います。
(12)熱いですか。
(13)(転んだ人に)だいじょうぶですか。
(14)これは本ですか。
(最近、「か」を使わずに「だいじょうぶです?(上昇調)」という疑問文を使う人が増えています。しかし、まだ正しい使い方とはされていません。)
¶また、「はい・いいえ」で答えさせる疑問文で、「でしょう」で終わる場合は、述語の種類を問わず必ず「か」を用います。(「か」を用いないと、別の意味が出ます。)
(15)田中さんはあした来るでしょうか。
¶それ以外(疑問詞疑問文の場合、動詞が述語で「でしょう」を伴わない場合)は、「か」がなくとも疑問文になります。ただし、少しなれなれしい印象を与えたり、詰問するような印象を与えることがあるので注意が必要です。
(16)どれが大きいです?(上昇調)
(17)どなたが山田さんです?(上昇調)
(18)田中さんはいつ来るでしょう?(下降調)
(19)田中さんは来ました?(上昇調)
2 普通体の会話での疑問文では、「か」を用いないで、文末の上昇調で疑問文であることを示すのがふつうです。ナ形容詞や名詞が述語のときは、「だ」を省きます。
(20)熱い?
(21)どれが大きい?
(22)だいじょうぶ?
(23)どの部屋が静か?
(24)これは、本? 
(25)どなたが山田さん?
(26)田中さんはあした来る?
(27)田中さんはいつ来る?
¶普通体の疑問文に「か」をつけると、聞き手に対する遠慮が全くない疑問文になります。主に男性の使う表現であり、しかも、部下や学生など、目下の人間に対して使うか、ごく親しい人同士で用いるのがふつうです。それ以外の場合は、尊大な態度や、聞き手を詰問するなどの態度を示すことになるので、使わないのがよいです。なお、ナ形容詞や名詞が述語になる場合、「だ」を除いて「か」をつけます。
(28)熱いか?
(29)だいじょうぶか?
(30)これは本か?
(31)田中さんはあした来るか?
3 ひとりごとの疑問文は、「はい・いいえ」を求めるような疑問文は「だろうか」「かな」「のか」「のかな」「かしら」で終わるのがふつうです。疑問詞疑問文は、その他に「だろう」で終わる場合もあります。
(32)熱い{だろうか/かな/のかな/かしら}? 
(33)どれが大きい{だろう/だろうか/かな/のかな/かしら}?
4 「普通体+か」の疑問文を文の途中にはさみこんだり、従属節としたりすることがあります。
(34)経済の状態はよくなるか、それが問題です。
(35)山田さんは、眠くなったのか、目をこすっています。
(36)買い物に出かけましたが、何を買うか、どこで買うか、わからなくなって困りました。
¶なお、英語の someone sometime などにあたる「誰か」「いつか」などは、このようなはさみこんだ疑問文が名詞などに変化したものと考えられています。
 
Ⅱ 「かしら」
1 疑問文を作ります。
(2)あしたは日曜日かしら。
¶「かしら」は主に成人女性が使います。男性も使うことがありますが、ひとりごとや、ひとりごとのような態度で聞き手にたずねるときに使うことが多いです。
 
Ⅲ 「な」
動詞の基本形について、禁止の意味を表わします。
(3)さわるな。
¶なお、この表現は丁寧ではありませんので、使うときには注意が必要です。
 
Ⅳ 「よ」
聞き手の注意をうながしながら自分の発話内容を言い聞かせるという話し手の態度を表わします。
(4)あしたは日曜日ですよ。
(37)今行きますよ。
(38)早く行きましょうよ。
(39)早くやってくださいよ。
¶なお、「よ」を使うと、「聞き手に言い聞かせる」という態度を表わすことから、しばしば「話し手のほうが立場が上、知識量が豊富」というニュアンスを伴うことがあります。目上の人に対して「よ」を用いるときは、注意が必要です。
 
Ⅴ 「ね(ねえ)」
1 そのことがらを話し手の心の中で確認しなおしていることを表わします。
(40)(時間を聞かれて、時計を確かめながら)3時ですね。
(5)わたしもそう思いますね。
2 また、聞き手に情報を確認したり、同意・共感を求めたりする場合にも用います。
(41)あしたは日曜日ですね。
(42)暑いですね。
 
Ⅵ 「な(なあ)」
1 ひとりごとで、出会ったり新たに知ったことがらを、感動とともに受け止める、という意味を表わすこともあります。
(6)ああ、きれいだなあ。
2 「か」とともにひとりごとの疑問文を構成することがあります。
(43)おや、まちがえたかな。
3 普通体(同項目参照)で、聞き手に情報を確認したり、同意・共感を求めたりする場合にも用います。
(44)あしたは日曜日だな。
(45)暑いな。
¶この用法は、男性しか使いません。
¶なお、丁寧体で用いることもありますが、通常年配の男性しか使いません。
(46)きょうは暑いですな(あ)。
 
余裕があれば(終助詞全体について)
1 終助詞には、他に次のようなものがあります。普通体(同項目参照)で用いるものや、話し手の性別の指標になるものばかりですので、丁寧体で話すときには使わないのがよいです。
 
・主に男性が使用
(47)来たのは山田君さ。
(48)僕がやるぞ。
(49)俺もやるぜ。
(50)よし、やるとも。 
(51)それは、僕がやるわ。(下降調)
・主に女性が使用
(52)それは、わたしがやるわ。(上昇調)
(53)きのう、コンサートに行きましたの。(以上、主に女性が使用)
2 一部の終助詞は、普通体でナ形容詞や名詞につく場合、「だ」を除いて直接つきます。一方、必ず「だ」の次に現れるもの、話し手の性別によって「だ」を除くか否かが異なるものもあります。
・必ず除く:か かしら さ 
・必ず「だ」の次:な(なあ) ぞ ぜ わ とも
・除く場合(主に女性)と除かない場合(主に男性)とがある:よ ね(ねえ)
3 終助詞は、いくつか重ねて用いることがあります。
(54)きょうは会議がありましたよね。
(55)その仕事はわたしがやったわよ。(主に成人女性が使用)
(56)そういうこともあるわな。(主に成人男性が使用)
(57)なんだ、君かよ(かい)。(主に男性が使用)
¶ただし、丁寧体で男女ともによく用いるのは「よね」だけです。他のものは、丁寧体にはふさわしくなかったり、微妙なニュアンスを伴う場合があったりするので、使わないのが無難です。
4 一部の終助詞は、文の成分と成分の間に現れて、聞き手に持ちかける態度を表わすことがあります。
(58)わたしはね、きのうね、新宿へね、行ったんですよ。
¶ただし、丁寧体で使うことができるのは「ね」だけで、その場合もくだけた、なれなれしい印象を聞き手に与えることが多いので、使わないほうがよいです。
¶その他、文の途中で使える終助詞は次のとおりです。通常男性が普通体で用いるもので、しかも相当くだけた(または乱暴な)印象を与えるので使わないほうがよいです。
(59)きのうな、新宿へな、……
(60)きのうさ、新宿へさ、……
(61)きのうよ、新宿へよ、……