東京外国語大学言語モジュール

~かもしれません・~にちがいありません

これだけは覚えよう
Ⅰ「かもしれません」
1 「かもしれません」(普通形「かもしれない」)は、あることがらが成り立つ可能性があるという考えを述べる表現です。「~でしょう」を使った場合より可能性が低くなります。
 
V(普通形)
Aい
NA
かもしれません
 
(1)山田さんは図書館にいるかもしれません。
(2)今ごろの東京は寒いかもしれません。
(3)山田さんは猫がきらいかもしれません。
¶「かもしれません」の文を作るには、動詞とイ形容詞の場合は普通形に、ナ形容詞と名詞の場合はそのまま、「かもしれません」を接続させます。
2 「かもしれません」は、低いけれども可能性があるということを示す「もしかすると」「ひょっとすると」などの副詞がいっしょに使われることが多いです。
(6)あの人はもしかすると木村さんのお兄さんかもしれません。
3 話すときには「かも」などのくだけた形も使われます。
(1)’山田さんは図書館にいるかも。
Ⅱ「にちがいありません」
1 「にちがいありません」(普通形「にちがいない」)は、あることがらが成り立つことを話し手が確信していることを表わす表現です。
 
V(普通形)
Aい
NA
にちがいありません
 
(4)今ごろは、山田さんはひまにちがいありません。
(5)あれは、田村さんにちがいありません。
¶「にちがいありません」の文を作るには、動詞とイ形容詞の場合は普通形に、ナ形容詞と名詞の場合はそのまま、「にちがいありません」を接続させます。
2 「にちがいありません」は、「たぶん、おそらく」や可能性が高いことを示す「きっと」などの副詞がいっしょに使われることが多いです。
(7)この時計はきっと高いにちがいありません。
余裕があれば
3 ある事実や状況からその背景にある事情や原因を想像して述べるような場合には、「かもしれない」は、前に「の」をつけて使います。
(8)妹が帰ってきません。もしかしたら事故にあったのかもしれません。
Ⅲ「はずです」
1 「にちがいありません」とよく似た表現に、「はずです」(普通形「はずだ」)があります。
 
V(普通形)
Aい
NAな
Nの
はずです
 
(9)今10時ですから、郵便局は開いているはずです。
2 「にちがいない」と「はずだ」には、次のような違いがあります。
 
①「はずです」は基本的に、「理屈上こうなる」という推論の結果としてのことがらを表わします。
(10)木村さんは英語教師ですから、英語が話せるはずです。
¶そのため、推論の結果と現実とが食い違う場合にも使えますし、以前から知っていた現実のことがらの理由や背景を知って論理的に納得したという場合にも使えます。このような場合、「にちがいありません」は使えません。
(11)木村さんは英語教師ですから英語が話せる{○はずなのに/×にちがいないのに}、日常会話さえできません。
(12)A:木村さんは英語教師です。
   B:そうですか、どうりで英語が話せる{○はずです/×にちがいないです}ね。
②「にちがいありません」は直感的な確信も表わすことができますが、「はずです」はできません。
(13)あの犬の様子を見て、病気{○にちがいない/×のはずだ}と思いました。
③「にちがいありません」は主観的な思い込みというニュアンスを帯びやすいので、客観的な述べ方が必要な場合は「はずです」のほうが適切です。
(14)このデータから考えると、留学生はこれからも増え続ける{○はずです/?にちがいありません}。
¶「はずです」は話しことばと書きことばの両方に使えますが、「にちがいありません」は話しことば、特に質問に対する答えではあまり使いません。
 「~かもしれません」「~にちがいありません」「~はずです」と似た使い方をする表現には、このほかに次のようなものもあります。
 
  V(連用形)
     A
NA
 
 そうです①
 
 
  V(普通形)
    Aい
    NA
 
 ようです
 
 
  V(普通形)
    Aい
        NA
 
  そうです②
 
 
 
    V(普通形)
        Aい
        NA
         N
 
  らしいです
 
 
Ⅳ「そうです①」
1 「そうです①」(普通形「そうだ」)は、状態を表わす「Vている」やイ形容詞・ナ形容詞につくと、ある対象の外観の印象からその性質を推察して述べる意味を表わします。
(15)この家はだれか住んでいそうです。
(16)このおかしは甘そうです。
(17)この電子辞書は便利そうです。
¶食べる前に外観から判断するときには「おいしそうです」を使い、実際に食べた後では「おいしいです」を使います。
×(おかしを食べる前に)このおかしはおいしいです。
¶また、「大きい」「背が低い」のように一見してわかる性質には「そうです①」をつかうことができません。
×この木は大きそうです。
×山田さんは背が低そうです。
2 「そうです①」は動きや変化を表わす動詞につくと、そのような動き・変化が起きる兆候があることを表わします。
(18)雨が降りそうです。
(19)わたしはきょう早く学校に行けそうです。
¶「そうです①」は、次のような話し手の意思的な行為にはふつう使えません。
(19)’×わたしはきょう早く学校に行きそうです。
「そうです①」の文の作り方
3 「そうです①」の文を作るには、動詞の場合は連用形(→「普通形の体系」)に、イ形容詞の場合は辞書形から「い」をとった形に、ナ形容詞の場合はそのまま、「そうです」を接続させます。ただし、名詞にはつきません。「ない」「よい」は「なさそうです」「よさそうです」になります。
4 「そうです①」は、「~そうなN」、「~そうにV・A・NA」という形で使うこともあります。
(20)ここにおいしそうなおかしがあります。
(21)木村さんはうれしそうに走ってきました。
Ⅴ「ようです」
1 「ようです」(普通形「ようだ」)は目の前の状況について「よくわからないがこういう様子だ」と述べる表現です。
(22)庭に車がありません。母は出かけているようです。
2 「ようです」には、対象の様子を他のものにたとえる比ゆの用法もあります。この意味の場合は副詞「まるで」が使われることが多いです。
(23)この絵はまるで写真のようです。
3 「ようです」は、「~ようなN」、「~ようにV・A・NA」の形でもよく使われます。
(24)小林さんは鳥のような声で歌います。
(25)このロボットは、生きているように動きます。
4 「ようです」は、次のように、判断と比ゆの両方の意味で解釈できる場合もあります。
(26)あの人は歌手のようです。
¶「あの人」が歌手であることを知らない場合は、状況からの判断の意味、「あの人」が歌手でないことを知っている場合は、比ゆの意味になります。どちらの意味かはっきりさせるためには、副詞が役に立ちます。状況からの判断の場合は「どうやら」「どうも」などを使い、比ゆの場合は「まるで」を使うことが多いです。
(27)あの人はどうやら歌手のようです。
(28)あの人はまるで歌手のようです。
「ようです」の文の作り方
5 「ようです」の文を作るには、動詞とイ形容詞の場合は普通形に、ナ形容詞の場合は「な」をつけて、名詞の場合は「の」をつけて、「ようです」を接続させます。
Ⅵ「そうです②」
1 「そうです②」(普通形「そうだ」)は、他の人から聞いたり本で読んだりして知ったことがらを表す、伝聞の表現です。情報源を表わす「~によると」や「~の話では」などがいっしょに使われることが多いです。
(29)来月から新しい生徒が来るそうです。
(30)天気予報によると、あしたは雨が降るそうです。
「そうです②」の文の作り方
2 「そうです②」の文を作るには、動詞とイ形容詞の場合は普通形に、ナ形容詞と名詞の場合は「だ」をつけて、「そうです」を接続させます。
Ⅶ「らしいです」
1 「らしいです」(普通形「らしい」)は、「ようです」のように状況からの判断を表わす場合(例文(27))と「そうです②」のように伝聞を表わす場合(例文(28))があります。
(31)木村さんが電話に出ない。出かけているらしい。
(32)山田さんは来月東京に行くらしいです。
2 「らしいです」は伝聞にもつながる意味を持つので、無責任なニュアンスを帯びやすいです。責任を持って発言しなければいけない場合や論文などでは不適切になることがあります。
(33)(医者が患者に)骨を折った{×らしいです/○ようです}。レントゲンを撮りましょう。
3 「そうです②」は情報源がはっきりしている場合に使われることが多く、「らしいです」はうわさなど情報源がはっきりしない場合によく使われるという傾向があります。
(34)先生から聞きましたが、来月から新しい生徒が来るそうです。
(35)うわさによると、山田さんは来月東京に行くらしいです。
「らしいです」の文の作り方
4 「らしいです」の文を作るには、動詞とイ形容詞の場合は普通形に、ナ形容詞と名詞の場合はそのまま、「らしいです」を接続させます。