東京外国語大学言語モジュール

出来事と判断

ある出来事に対して,話し手の心的態度が「直説法」「条件法」「願望法」「命令法」「接続法」といった,文法的「法」として,体系的に現れる場合については,「話し手の心的態度による限定」(Card-031)で説明しました。
文法的「法」(mood,ムード,叙法)は,インドヨーロッパの諸言語では,動詞の活用形や,法助動詞の形で体系化されています。
このような体系的な文法的「法」を持たない言語でも,ある出来事に対して,話し手がそれをどのように捉え,判断しているかを示す手段を持っています。英語などのいわゆる「法助動詞」が表す「能力」「可能」「義務」「必然」といった出来事の捉え方は,必ずしも動詞の活用や助動詞で表される必要はないのです。
たとえば,日本語の「~するとよい」というのは,「Aする動作により,Bという望ましいと判断される結果が得られる」という一種の継起的な因果関係の組み合わせの表現により,「願望」を表現しています。
言語によって,助動詞,動詞の組み合わせ(たとえば動作と判断の組み合わせ),句の組み合わせなどによって,出来事とそれについての話し手の判断を示すことがあります。