東京外国語大学言語モジュール

文法と機能語

「文」の一つの典型として,日本語の「モノがドウスル」という出来事を表す文を考えてみましょう。
典型的にはモノを表すのには名詞が,ドウスルという動作を表すのには動詞が用いられます。日本語の「犬が走る」という文を考えると,犬というモノ(指示対象)を「イヌ」という名詞で示し,「走る」という動作を「ハシル」という動詞を述語とすることで示しているのです。「犬が走る」という出来事において,指示対象であるイヌと動作であるハシルとの間の関係(あるいは動作ハシルに対して,この場合イヌが動作主であるという関係)を,「ガ」という助詞によって示しています。
一般に,文は,モノや動作,状態などの概念をその意味として持っている単語と,日本語のテニヲハのように,単語同士の関係性を示すことを主な機能とする単語(形態素)を含んでいます。単語のうち,前者を語彙的単語(実詞)と呼び,後者を文法的機能語(虚詞)と呼びます。
単語と単語の関係を示すための,もう一つの手段として,語順があります。英語では,「モノがドウスル」と言うときの語順は, A dog runs. のように「名詞(句)+動詞(句)」であって,この場合,名詞句が動詞句の直前に置かれることが,両者の文法的関係(いわゆる「動作主主語」と「動作述語」の関係)を示しています。