形容詞 pauvre の位置

 
解説のところで de pauvres hommes 「哀れな人たち」 ←→ des hommes pauvres 「貧しい人たち」という例をあげました。実際の話しことばではどうでしょうか。3つの話しことばコーパスの中に40例が見つかりました。それを分類すると次の表のようになります。
 
意外なことに、pauvre が名詞の前にきて「かわいそうな、哀れな」という意味になる例が多く、全体の半分になります。これに対して名詞の後にきて、「貧しい」の意味になる例は7例でした。être動詞の後にくる、Les paysans sont extrêmement pauvres.「農夫たちはとても貧しい。」の例とほとんど同じ頻度です。
このコーパスを見るかぎり、pauvreという形容詞は、名詞より前に現れることのほうが多い形容詞だと言えます。ではどのような名詞の前に現れるのでしょうか。以下の表を見てください。
 
pauvre+名詞
哀れな~
出現数
 
pauvre+名詞
哀れな~
出現数
pauvre fille
3
 
pauvres vieillards
老人
1
pauvres gens
人たち
3
 
pauvre évêque
司教
1
pauvre femme
2
 
pauvres familles
家族
1
pauvre monsieur
2
 
pauvres diables
悪魔
1
pauvres types
2
 
pauvre gosse
子供
1
pauvres vieux
老人
1
 
pauvres malheureux
不幸な人
1
pauvre mère
1
 
 
 
 
 
当然と言えるかもしれませんが、名詞はすべて人を表す語でした。これに対して「貧しい」の意味になり、名詞の後にくるときは次の表のようになります。
 
名詞+pauvre
貧しい~
出現数
 
名詞+pauvre
貧しい~
出現数
familles pauvres
家族
2
 
régions pauvres
地域
1
mots pauvres
表現
1
 
montagne pauvre
1
parents pauvres
両親
1
 
quartiers pauvres
地区
1
 
人を表す名詞だけでなく、客観的に貧しさを測ることができるいろいろな名詞が来ています。
 
謝辞
ここで扱っている言語運用データは現代フランス語の延べ201時間(111万語)の話しことばコーパスです。これらはいずれも1960年代末から70年代半ばにかけて、イギリスのフランス語教員たちが行った録音データを文字化したもので、現在、3つのコーパスはルーヴァン・カトリック大学文学部言語学科のサイトELICOPに掲載されており、検索ツールも3種類用意されています。資料の利用許可を与えていただいた同言語学科に感謝します。