東京外国語大学言語モジュール

接続法の用法

接続法は学習内容がたくさんあります。ここでも3つのステップに分けました。このうちステップ1とステップ2は必ず攻略しなければいけません。
ステップ1
感情をあらわす表現にはêtre heureux que「~でうれしい」のほかに、次のようなものがあります。avoir peur que「~が心配だ」、Ça m'étonnerait que「~とは意外だ」、C'est dommage que「~で残念だ」、être désolé que「~で悲しい」、regretter que「残念だ」。例を3つあげておきましょう。

主節が感情をあらわす表現のとき

(3) J'ai peur qu'il (n')y ait une grève du métro demain.
(明日地下鉄のストがあるかどうか心配だ。)
(4) Ça m'étonnerait qu'il fasse mauvais demain.
(明日天気が悪いなんて意外だ。)
(5) Je suis désolé que votre père soit malade.
(あなたのお父さんが病気なのが私は悲しい。)
註: (3)にはしばしば虚辞のneが現れますが、否定の意味はありません。
願望や義務には、il faut que「~ねばならない」のほかに、次のような表現があります。Il est indispensable que「~が欠かせない」、souhaiter que「望む」、vouloir que「~したい」。

主節が願望や義務をあらわす表現のとき

(6) Nous souhaitons que tu puisses trouver vite du travail.
(君が早く職がみつかることを私たちは望みます。)
(7) Je veux absolument que tu le fasses.
(私は絶対に君にそれをやってほしい。)
註: (7)の例の主節と従属節の主語が同じとき、この構文は使えません。たとえば*Je veux que je le fasse.は誤りで、不定詞を用いてJe veux le faire.「私はそれをやりたい」と言います。
ではステップ2に進みましょう。
ステップ2

接続詞queをともなうさまざまな表現のとき

(8) Il viendra nous voir avant qu'il ne fasse nuit.
(彼は暗くなる前に私たちに会いに来るでしょう。)
avant que「~する前に」の後では、動詞は必ず接続法になります。
(8)のように接続詞queをともない、接続法の要求される表現がけっこうあります。しかも基本で重要なものが少なくありません。代表的な例を見ておきましょう。

bien que +接続法 「~にもかかわらず」

(9) Bien qu'il soit encore jeune, il occupe déjà un poste important.
(若いのに彼は重要な職についている。)

jusqu'à ce que +接続法 「~するまで」

(10) Je resterai ici jusqu'à ce qu'il soit de retour.
(彼が戻るまで私はここに居よう。)

pour que +接続法 「~するために」

(11) Parlez plus fort pour qu'on puisse vous entendre.
(言っていることが聞こえるようにもっと大きな声で話してください。)
これ以外にも、à condition que「~という条件で」、afin que「~するために」、à moins que「~でない限り」、à supposer que「~と仮定して」、de peur que「~を恐れて」、pourvu que「~でありさえすれば」、quoique「~ではあるが」、sans que「~なしで」などが比較的よく使われます。
 
初級文法における接続法としては、このステップ2までは攻略して欲しいところです。さらにステップ3に進みますが、もううんざりという方は、例文に進んでかまいません。
ステップ3

主節が判断・理由をあらわす表現のとき

(12) C'est important que vous sachiez la grammaire du français.
(フランス語文法を知ることは重要です。)
(13) Je ne lui parle pas, ce n'est pas que je le haïsse.
(私は彼と話をしないが、それは彼が嫌いだからではない。)
多くの場合、直説法や条件法の文も可能になりますが、接続法のときとニュアンスが異なります。例をあげて説明しましょう。

主節が否定形や疑問形のとき

(14) Je ne pense pas qu'il vienne volontiers. (vienneは接続法現在形)
((私には)彼が喜んで来るようには思えない。)
(15) Je ne pense pas qu'il viendra (あるいは viendrait ) volontiers. (viendraは直説法単純未来形、viendraitは条件法現在形)
(私は彼が喜んで来るとは思わない。 )
(14)の場合、話し手は「彼が喜んで来ること」に対して疑いをもっていて、彼が喜んで来ることは不確かなことと考えられています。一方(15)では、話し手の立場は明解であり、「彼が喜んで来ることはない」と考えています。主節が疑問形になる文でも同じようなことが言えます。
(16) Te souviens-tu qu'elle ait réussi son examen ? (ait réussiは接続法の複合過去形)
(彼女が試験に受かったか覚えている?)
(17) Te souviens-tu qu'elle a réussi son examen ? (a réussiは直説法の複合過去形)
(彼女が試験に受かったことは覚えている?)
(16)では、話し手は「彼女が試験に受かった」かどうか確信がありません。それが本当かどうかを相手に確かめている疑問文です。ところが(17)では、「彼女が試験に受かった」ことは話し手にとっては、既成事実であり、相手にそのことを知っているかと尋ねているのです。