東京外国語大学言語モジュール

使役動詞faireとlaisser

(1) Je fais pleurer ma sœur.
(私は妹を泣かせる。)
(2) Je laisse pleurer ma sœur.
(私は妹を泣かせておく。)
(1)のfaireの使役文では、文の主語が行為を行わせる主体です。つまり、妹を泣かせるのは、私です。これに対して(2)では、私は行為を行わせるのではなく、行っている行為をそのままにしておくわけです。
以下の部分はさらに詳しい使役文の解説です。必要と思う方だけ読んでください。手一杯の方は、気にせずに例文に進みましょう。
少し複雑になりますが、「先生は生徒たちに発表をさせる」という文を考えましょう。「させる」には、「生徒たちに」と「発表を」という2つの要素がかかわってきます。この文は次のように表現されます。
(3) Le professeur fait faire des exposés aux étudiants.
(先生は生徒たちに発表をやらせる。)
さらに別の例を見ておきましょう。
(4) L'agent de police laisse passer les voitures.
(警官が自動車を通らせる。)
(4)は事故現場での交通整理を考えればよいでしょう。laisserの使役文ですが、主語がl'agent de police「警官」であるため、警官が主体的に車を通らせるというニュアンスが出て、使役性が強く意識されます。逆もまた真なりです。次のfaireの使役文をみてください。
(5) Le soleil fait pousser les plantes.
( 太陽のおかげで植物が生える)
(6) Le vent fait avancer le voilier.
(風でヨットが進む)
使役文なのに、主語がle soleil「太陽」やle vent「風」であるため、ほとんど使役性が感じられません。次の文はどうでしょう。
(7) J'ai fait payer mon voyage par mon entreprise.
(私は旅費を会社に払わせた)
なんだかずいぶん横暴な感じがします。あるいは無理やり旅行に出されたのでしょうか?いずれにしても、通常、会社での出張旅費は、会社に書類を出して払ってもらいます。こうした間接的な使役は、se faire+不定詞を用いて、以下のように表現するのが適当です。
(8) Je me suis fait payer mon voyage par mon entreprise.
(私は旅費を会社に払ってもらった)
次の例も同じです。
(9) Je me suis fait examiner par le médécin.
(私は医者に検査してもらった)