東京外国語大学言語モジュール

受身文

(1)  <être+動詞の過去分詞>による受身文
最も一般的な受身形と言われますが、頻度は思ったほど高くありません。行為者をはっきりと表示する必要があるときにだけ<par+名詞>を使います。
      主語            直接目的語
能動文 Jean-François Millet a peint le tableau «Les Glaneuses».
                    ↓
             主語と直接目的語が交代
                    ↓
受動文 Le tableau «Les Glaneuses» a été peint par Jean-François Millet.
『落穂ひろい』の絵はジャン=フランソワ・ミレーによって描かれた。
この受身文の特徴は、能動文の直接目的語が受動文の主語になっている点です。いくつかの動詞で、能動文の主語が<par+名詞>ではなく、<de+名詞>の形で現れることがあるので注意しましょう。<de+名詞>をとる動詞には、être aimé 「愛される」、être couvert 「おおわれる」、être connu 「知られている」、être respecté 「尊敬される」などがあります。
Cette actrice est connue de tout le monde.
(この女優はみんなに知られている。)
La limitation de vitesse doit être respectée de tous les automobilistes.
(制限速度は全てのドライバーによって遵守されなければならない。)
(2) 不定人称代名詞onを用いた受身文
Onを用いた文も、受身の意味を表すことができます。
On a creusé un passage souterrain.
(地下通路が作られた(=掘られた)。)
On a rehaussé et élargi les trottoirs.
(歩道の高さが上げられ、広げられた。)
この構文の特徴は、(1)の<être+過去分詞>とは違い、行為者が表現されないという点です。多くは3人称で表される出来事について述べ、出来事だけに焦点があたって、それを誰がやったのかはっきりしません。次の文のように、被害者はわかっても、加害者はベールに包まれたままなのです。
On m'a volé ma moto. 私はバイクを盗まれた。
(3) 代名動詞を用いた受身文
Ces voitures se fabriquent à l'étranger.
(これらの車は外国で生産されている。)
代名動詞を使った受身文は、主語が人ではなく、「物」に限られます。また代名動詞を用いると、onを使った受身文よりも、さらに行為者の存在が背景に押しやられた状況や状態を表現することが可能になります。
Le bleu ne se voit pas.
(その青アザは目立たない。)
La séance s'est ouverte par une symphonie de Brahms.
(演奏はブラームスの交響曲で始まった。)