東京外国語大学言語モジュール

大過去形の用法

(1) Je croyais qu'elle avait été malade.
(私は彼女が病気だったと思っていた)
この大過去形は、主節(=私が思っていた)よりも前に起きていた状況(=彼女が病気だった)を表しています。
(2) Quand vous m'avez téléphoné, j'étais sorti.
(あなたが私に電話をかけた時、私は出かけていました)
(2)の大過去形は、他の節(=あなたが電話をかけた)よりも相対的に前に起きていた状況(=私が出かけた)を表します。(1)と(2)の例はいずれも、「過去における過去」を表現しています。さらに他の例をあげておきます。
(3) Nous sommes arrivés à la gare avec cinq minutes de retard. Évidemment, le train était déjà parti.
(私たちは5分遅れで駅に着いた。もちろん、列車はもう出発していた)
(4) Mais je te l'avais bien dit !
(だから君に言っていたのに!)
ここでは話し手が過去に身をおいているのではなく、現在に身を置きつつ、現実の状況との隔たりを強調しながら、過去の経験を説明しています。話し手は、自分が言っていたことが的中し、予想していた状況が現実化したことへの驚きを述べているわけです。この種の大過去形は他に節のない、単独の文の中によく現われます。
(5) Je n'avais jamais essayé.
(いちども試したことがなかったよ)
(5)も同じです。話し手が相手に伝えたいのは、「試したことがなかった」というよりは、「だから今こうしてはじめて試している」という、過去の経験と現実との落差なのです。そこから、おのずと驚きのニュアンスが出てきます。もう1つ同じような例をあげておきます。
(6) J'avais pensé que tu aimerais ce plat.
(君がこの料理を好きだろうと思っていたよ)
(7) Si nous avions été plus riches, nous aurions acheté un plus grand appartement.
(もし私たちがもっとお金もちだったら、もっと広いアパルトマンを買っていたでしょう)
過去の事実に反する仮定を表します。これについてはカード82で詳しく学びます。