東京外国語大学言語モジュール

083: 接続法 (6) ― 願望などの表現

 「(あのとき)もし~していたらなあ」と過去のことを後悔したり愚痴ったりするときは,これまで見てきたのと同じように完了形を使い,完了の助動詞 haben/sein を接続法2式にします。
 
(4)
Wenn ich das doch nur nicht gesagt hätte! 
あんなこと言わないでおけばよかったなあ。
 ステップ82の解説で,wenn を用いず,定動詞を前に置くだけでも wenn ... と同じことが表せると説明しましたが,願望・後悔などの表現でも同じです。
 
(5)
Hätte ich das doch nur nicht gesagt! 
あんなこと言わないでおけばよかったなあ。
  カードの例文 (3) で見たように,「もし~ならば」が明示されないこともありますが,次の (6) や (7) もそのような例文です。beinahe (あやうく),fast (ほとんど),um ein Haar (もう少しで)などを伴う接続法2式の文で「あやうく/ほとんど/もう少しで~するところだった」ということを表します。
 
(6)
Ich hätte heute schon beinahe einen Unfall verursacht! 
今日はあやうく事故を起こすところだったよ。
 
(7)
Um ein Haar hätte ich den wichtigen Termin vergessen! 
もう少しで大事なアポイントメントを忘れるところだったよ。
  次の例では,たとえば「もし,その気になれば」とでも補って考えてください。
 
(8)
Aber ... na ja, du hättest ja auch später kommen können! 
でも,遅れて来てもよかったのに。[会話26]
 
(9)
Aber ... du hättest uns doch mindestens anrufen können. 
でもせめて電話ぐらいしてくれたらよかったのに。[会話26]
 最後の助動詞 können について少し説明しておきましょう。ステップ49の解説で Sie hat diesen Brief lesen müssen. (彼女はこの手紙を読まねばならなかった。) という文を説明しました。hat ... müssen でmüssen (ねばならない) の完了形なので,hat ... lesen müssen で「読まねばならなかった」という意味になるのでしたね。おなじように組み合わせると,(8) は hättest ... kommen können なので「来ることができた+非現実」つまり「来ることができただろうに」という意味になります。(9) も hättest … anrufen können で「電話することができた+非現実」つまり「電話することもできただろうに」という意味になります。