東京外国語大学言語モジュール

049: 完了形と助動詞の組み合わせ

 werden と完了形の組み合わせは一般に「未来完了形」と呼ばれていて,例文(1)のように文字通り「未来」における「完了」の意味で用いられることもありますが,次の (4)a のように過去の事柄についての推量の意味で使われることもあります。(4)b は現在の事柄についての推量です。
 
(4)
a.
Sie wird wohl krank gewesen sein. 彼女はたぶん病気だったのだろう。(過去の推量)
 
 
b.
Sie wird wohl krank sein. 彼女はたぶん病気なのだろう。(現在の推量)
 さて,ステップ33では「助動詞のあるドイツ語文を作る手順」を学びましたが,ここでは逆にドイツ語文の意味を取る手順を整理しておきましょう。次の例文(5)はどういう意味でしょうか。
  (5)  Sie muss diesen Brief gelesen haben.
手順1:まず,定形の助動詞を右端に移します。
 
 
Sie
muss
diesen Brief gelesen haben.
 
 
 
 
    └─────────────────────────────┐
 
Sie 
 
diesen Brief gelesen haben
muss
手順2:左端から順に日本語に置き換えていきます。
 
 
Sie
diesen Brief
gelesen haben
muss
 
彼女は
この手紙を
読んだ(gelesen haben=完了)
にちがいない(muss)
 過去分詞と haben/sein の組み合わせで完了形だということを押さえておくことがポイントです。完了形を日本語にするときは「~した」と「~している」のどちらが適切か,臨機応変に考えてください。
 さて,それでは次の(6)はどういう意味でしょうか。(ここから先は多少複雑なので,読み飛ばしても構いません。)
  (6)  Sie hat diesen Brief lesen müssen.
 上の手順を当てはめて考えてみましょう。
手順1:まず,定形の助動詞を右端に移します。
 
 
Sie
hat
diesen Brief lesen müssen.
 
 
 
 
   └─────────────────────────┐
 
Sie
 
diesen Brief lesen müssen
hat
手順2a:左端から順に日本語に置き換えていきますが...
 
 
Sie
diesen Brief
lesen
müssen hat
 
彼女は
この手紙を
読む(lesen)
...
 lesen まで来て,müssen と hat が残ってしまいました。 ― この müssen は不定形と同じ形に見えますが,実は過去分詞として用いられているのです。したがって,最後の müssen hat の部分は müssen の完了形「~ねばならなかった」ということになります。
手順2b:左端から順に日本語に置き換えていきます。
 
 
Sie
diesen Brief
lesen
müssen hat
 
彼女は
この手紙を
読む(lesen)
ねばならなかった(müssen hat=完了)
 
彼女はこの手紙を読まねばならなかった。
 話法の助動詞には二つの過去分詞があります。(7)a のように,本動詞を伴わずに単独で用いる場合は本来の形の過去分詞,(8)aのように,本動詞と供に用いる場合は不定形と同じ形の過去分詞を使います。
 
(7)
a.
Ich habe in die Stadt gemusst. 私は町へ行かねばならなかった。(現在完了形)
 
 
b.
Ich muss in die Stadt.  私は町へ行かねばならない。(現在形)
 
(8)
a.
Ich habe in die Stadt fahren müssen. 私は町へ行かねばならなかった。(現在完了形)
 
 
b.
Ich muss in die Stadt fahren. 私は町へ行かねばならない。(現在形)