東京外国語大学言語モジュール

1.8.3. 強勢音
(1) 歯茎音の強勢音
t  d  s  z には、対応する強勢音 ṭ  ḍ  ṣ  ẓがあります。強勢とは、舌の奥に力を入れて盛り上げている発音です。舌の奥が口蓋垂に接近するので口蓋垂化とも呼ばれます。詳しくは標準語のページを参照して下さい。
t/ṭ  d/ḍ  s/ṣ  は文語と同じなので、文語の例を聞いてください。ẓ は文語にないので、例を挙げておきます。
ظريف /ẓɑriːf/ かわいい
エジプトアラビア語の強勢音は、前後の母音aの音色が異なるのが特徴です。aには [ɑ] と [æ] の2種類があり、それで区別することが可能です。
 
(2) r[ɾ]の強勢音
r [ɾ] には対応する強勢音 ṛ があります。しかし、単語の中のほかの子音や母音との関係で強勢か強勢でないかが入れ替わります。
r は、前後に母音aがあるときは強勢音です。逆に、前後に母音i, e があるときは非強勢音です。
強勢のr
كورة /koːrɑ/ ボール
非強勢のr
كبير /kibiːr/ 大きい
同じ単語の変化形においても、強勢と非強勢は入れ替わります。
راجل /ṛɑːɡel/ 男の人(単数)
رجالة /reɡɡaːla/ 男の人(複数)
تجارة /teɡɑːṛɑ/ 商業
تجاري /teɡaːri/ 商業的