21世紀COEプログラム 言語運用を基盤とする言語情報学拠点(2002-2006年度)

期待される研究成果・意義

言語教育工学および外国語教育学の研究成果(言語教育学と情報工学の連携)

英語以外の多言語をベースとするe-Learningはいまだ発展途上であり,本研究科がその開発に着手することの意義は大きい。たとえばアジアの諸言語(ベトナム語,ラオス語,カンボジア語,フィリピン語,モンゴル語など)を対象とするe-learningは,他大学の追随を許さない本学独自の学術的研究と言える。また全世界的に見ても,英語以外の言語における第二言語習得理論の研究は数が少なく,この点からも本拠点形成の学術的意義は極めて大きい。e-learningのシステムは世界中で利用される可能性があり,その波及効果は絶大である。さらにe-learning教材のモニタリングを行い,そこから言語能力評価法,クラスルーム・リサーチ,シラバスや教材分析などの言語教育学的研究成果が期待できる。

コーパス言語学および自然言語処理の研究成果(言語学と情報工学の連携)

言語機能を重視した機能別の多言語コーパス(文法機能や挨拶,謝罪,賞賛などの言語機能に関するコーパス)と目的を重視した研究目的別の多言語コーパス(言語研究,文化研究などに関するコーパス)を構築する。これらのコーパスは外国語教材の開発のみならず,異文化理解や大学教養教育に資するところが極めて大きい。本拠点形成のように多言語かつインターネット上の言語資源を活用する目的別コーパスは世界的にも類例がない。

言語情報学による統合的研究成果(情報工学を基盤とした言語学と言語教育学の統合)

従来の言語研究や言語教育では,言語運用の実態を科学的に分析することの必要性が必ずしも認識されてこなかった。言語学はこれまで理論研究と内部構造の記述に終始し,実際に使用される談話やテキストを重点的に研究し始めたのはごく最近のことに過ぎない。本拠点形成はインターネット上の言語資源や情報工学の成果を取り入れることで,従来の研究方法の限界を打破し,言語運用の実態を科学的に解明する。さらにその研究成果は言語教育の現場にも応用される。このように情報工学を基盤としつつ,言語学と言語教育学を言語情報学の名のもとに統合することで,本学研究科からは言語理論と情報技術の十全な知識を兼ね備えた外国語教育研究者が養成される。本拠点形成はひいてはわが国における外国語教育の高度化にも貢献するものと考えられる。